2020年6月17日 (水)

リモートワークと働き方改革(2)

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前回につづき、リモートワークと働き方改革について、私の実体験を今のコロナの状況に重ねて紹介する。

 

■ 一人働き方改革

 

リモートワークで地方移住を考える場合、住む場所についてもいろいろな要素が期待できる。子育ての環境や自分の趣味、親の介護や家族の健康など、その人にとって重要な要素は様々だろう。都会に住んで満員電車で通勤することから比べると、選択肢が多く何を選んでよいのかもわからなくなるかもしれない。優先順位をしっかりつけて、家族と話し合って決めていくことが大切だ。

 

私の場合は、駐在でカリフォルニアに生活基盤があったことや、子供たちが大学生になるタイミングだったこと、新しく始めるビジネスのロールモデルがあったことなど、さまざまな要因が重なって、アメリカに住むことに決めた。

 

それ以前に、人生の中で一定期間はアメリカに住みたいという思いがあったし、いつかは“社長”になりたいと思っていたことも事実だ。そういった“夢”というほどではない漠然とした“思い”が実現できたことも“一人働き方改革”を実行した副産物だった。いや、どうせ会社を辞めて人生をリセットするなら、そういった子供じみた“思い”も一緒に丸ごと実現させたいと、突き進んだというべきだろうか。

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リモートワークが進むと、能力のある社員は兼業も視野に入ってくる。会社の仕事が成果で評価されるようになると、短時間で成果を出せる人材は自分の時間に余裕ができるので、その時間に他の仕事ができるはずだ。

 

5~6年前にシリコンバレーの特徴を表すキーワードとして“Solopreneurs”という言葉があった。起業家を意味するEntrepreneurとう単語の前半を1人という意味のSoloに置き換えた造語で、「一人起業家」といった意味合いをもつ。シリコンバレーでは能力のある人材が掛け持ちで複数のベンチャー企業の仕事をするケースがある。これを ”Solopreneurs”という。もちろん収入もその分増える。日本でも不可能ではないはずだ。

 

リモートワークが浸透すると地方への移住が増える理由は他にもある。日本の都市圏の住居はとにかく狭い。2LDKのマンションで子供がいる家庭では家の中でリモートワークをするスペースなどないはずだ。そもそも書斎のある家を持っている人は少ない。田舎に行って広い家に住めば、仕事用の部屋も確保できるので、働き方改革と合わせて一石二鳥だ。

 

リモートワークによる地方移住が大きな流れになると、都市部と地方の住宅市場にも変化がおこり、そこに新たなビジネスチャンスも生まれる。地方に移住したからといって人の移動が減るわけではなく、移動の場所や形態が変化する。ドローンタクシーの実現も近いかもしれない。そこにも、これまでにないビジネスモデルがあるはずだ。

 

田舎の両親がなくなって兄が実家を受け継いだときに、5年後を見据えて家の前の畑にドローンの発着場を整備しようと提案したことがある。その頃はまだ中国人のインバウンドを見込んでの提案だったが、今となっては別のモデルを考えるべきだろう。このように、リモートワークや働き方改革が新しいビジネスモデルのアイデアを生み出すきっかけになることも大いに期待できる。

 

 

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リモートワークと働き方改革(1)

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コロナの影響で日本でも大企業を中心にリモートワークが広がった。この流れはコロナが収まっても続いていく。世界の企業では、すでにリモートワークが定着しているところも多い。

 

会社に行かなくても仕事ができるなら、地方への移住が増えたり、企業の東京以外への移転も加速されるだろう。地方への移住は、個人の働き方と同時にその人の生き方を変えることを意味する。

 

私が脱サラして会社を作ったのはもう10年も前のことだ。その頃の日本企業は、バブル崩壊後の20年を内部留保の蓄えに使って、社内では業務改革という名の会議が延々と続き、コンプライアンスという名目の書類に追われる状況だった。

 

私が会社を辞める決断をした理由は別にあるのだが、その時に“自分のこれからの働き方”を考えたことは事実だ。自分はどこに住んで、どういう暮しをして、どういう働き方をしたいのだろうか、ということを原点に戻って考えた。その結果が、日本ではなくてアメリカだった。サラリーマンではなくて自営のコンサルタントだった。

 

その頃は、残業ゼロとか育休取得だとかは言っていたが、働き方改革という言葉はあまり言われていなかったと思う。いま思い返してみると、自分はその時に働き方改革を一人で勝手にやってしまったということになる。

 

そのころに考えていたことを今のコロナの状況と重ね合わせてみると不思議なほど合致するので、皆さんに紹介してみたいと思う。

 

 

 

■ 私のリモートワーク

 

コロナの影響で突然リモートワークになった人たちは、上司も部下もそれぞれの立場で困ったり戸惑ったりしていると思う。上司は部下を管理しないことが不安で仕方がないと感じている。部下は管理されないことが不安だと思う。

 

日本の会社は労働の管理を時間でやっているので、時間で管理できないリモートワークになると、部下の労働管理をどうやっていいかわからない上司も多いだろう。一日何回も部下に対して、仕事をしているかの確認のラインを送る上司もいるとか・・・ 

 

部下も会社の机でパソコンに向かっている時間が長ければ長いほど“仕事をしてる”アピールができるので安心だったが、リモートワークになると成果だけしかアピールできるものがなくなる。

 

これは、私が独立してコンサルタントを始めたときから10年間闘い続けていることだ。コンサルタントなので、クライアントに提供する成果だけが評価の対象になる。究極のリモートワークだ。どれだけ時間をかけたかはクライアントには関係ない。クライアントが求めるものを提供できて当たり前で、継続して契約してもらうためにはそれ以上のものを提供しなければ、すぐに契約を切られる。しかも、ここまでやれば十分という“合格ライン”がないので、いつも不安でしかたがない。

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上司の立場でリモートワークを使いこなすためには、部下を成果で評価する能力が必要だ。部下に成果を出させるためには、求める内容と目標レベルを部下に明確に示してやることも必要だ。さらに成果で評価するためには、仕事の内容を上司が理解している必要がある。技術系では上司よりも部下の方が専門知識を持っている場合がある。そんなときは、市場や客先のニーズに基づく方向性と達成レベルを明確にすることで、部下を指導することができる。

 

部下の立場でリモートワークを成功させるには、上司が何を求めているのかを正確に把握することから始める。ほとんどの上司は自分の指示を明確に伝えることができないと思った方が良い。言われたことだけを聞いて納得してはいけない。言葉の裏にある本当のニーズを理解する努力をする必要がある。それが判れば、あとはやるだけなので、そんなに難しくはない。

 

コンサルタントの場合も同じだ。クライアントの要求を正確に理解することが、コンサルタントの第一歩だ。クライアントも彼らの要求を正確に伝えられないことが多い。そんなときは、こちらから質問を繰り返して本当のニーズを引き出す努力をする。これを間違って理解すると、出した成果が評価されないという最悪の事態になる。コンサルタントとしては死活問題になるので必死だ。

 

(づづく)

 

 

 

 

 

 

2020年5月23日 (土)

最近の調査実績

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弊社、TechnoScape, LLC は米国カリフォルニア州の技術コンサルタントです。ロサンゼルスを拠点にして、日本企業の皆さまのイノベーションを支援しています。このブログでは、米国における技術トレンドやその時々のトピックを紹介しています。

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今回は、TechnoScapeが実施した、ここ最近の調査やセミナーを紹介します。もちろん、個別のクライアントに関する情報は開示できないので、技術面での項目のみを書き出しています。弊社の活動のイメージをご理解いただければと思います。

 

 

プリンテッドエレクトロニクス

  • 市場予測
  • 材料(銀、銅、グラフェン、CNT、有機物、他)
  • アプリケーション(テキスタイル、バッテリー、RFID、センサ、他)
  • プロセス(印刷、3D印刷、他)

 

センサ

  • ウエアラブルセンサ
  • ガスセンサ、圧力センサ
  • バイタル、血糖値、心電図、汗、涙、他
  • バイオセンサ(タンパク質、アミノ酸、ペプチド、、)
  • OFETセンサ

 

ワイヤレスセンサの市場トレンド

  • IoTネットワーク
  • エナジーハーベスタ
  • スマートシティ
  • スマートホーム
  • 医療用センサ

 

米国の水処理業界

 

米国医療制度と社会問題

  • 慢性病
  • オピオイド
  • 電子タバコ

 

SBIR分析

  • SBIRは米国政府の開発補助金制度で年間3,000億円を超える資金が投じられています。毎年5,000件を超えるプロジェクトに資金提供しています。過去10年以上にわたり、補助金の動向を分析しています。

 

VCトレンド

  • 全米ベンチャーキャピタル協会の統計資料などから、VCの投資動向を分析しています。

 

CESレポート

  • 毎年ラスベガスで開催されるCESは、世界最大のエレクトロニクス展示会です。TechnoScapeでは過去10年間毎年参加して、展示会場のレポートを作成しています。独自に選んだ100社以上の展示ブースの内容を1,000枚を超える写真データと共に提供しています。

 

イノベーションセミナー

  • イノベーションに関する情報やトレンド、ケーススタディなどを、ご要望に応じて提供しています。

 

 

米国での新技術調査、イノベーションのご相談は TechnoScape, LLC まで。

 

2020年5月 3日 (日)

9月入学の議論は正しくされていないのではないか

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新型コロナの自粛が長引くなかで、日本では9月入学の議論が急に盛り上がっているが、果たして正しい議論がされているのだろうか。9月入学にすること自体は良いと思うし、コロナの騒動で一機に移行するのも悪くはないと思う。

 

しかし、日本のテレビで言われている議論を見ると、大事なことがいくつか抜けている。ワイドショーの芸能人コメンテーターや政治や教育の“専門家”と言われる人たちは何も分かっていないのに無責任なコメントを公共の電波に乗せている。非常に心配だ。

 

アメリカの教育制度は K12 と言われ、幼稚園の最終1年から高校までを義務教育としている。カリフォルニア州の公立校では小学校6年、中学2年、高校4年だが、私立では中高一貫のところも多い。以前は中学校をジュニアハイスクールと呼んでいたが、今はミドルスクールと呼んでいる。これは、中学を高校へのつなぎの教育と位置づけて6年生から8年生を対象として、協働学習などに重点を置いている。

 

K12の新学期は9月からはじまり、6月で学年が終了する。KはKinderで幼稚園の最終学年のこと。小学校1年生には、その年の12月までに6歳になる子供が9月に入学する。これが実は日米で大きな違いになっている。アメリカの子供たちは、日本の子供たちより半年早く就学している。つまり、現状で日本の子供たちはアメリカの子供よりも半年遅れて入学している。

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さて、いま日本で議論が盛り上がっている9月入学への変更には、抜けている部分が多い。まず、現在の日本の議論は、4月からの新学期で授業ができていないから(あるいは格差がついているから)“この際5ケ月遅らせて9月はじまりにすればいいじゃないか”というものだ。これは大変な間違いで、これをやると日本の子供たちはアメリカの子供よりも1年遅れて就学することになる。今年の9月に入学させるべきは、今の1年生ではなく来年の1年生なのだ。

 

仮に今年9月を新学期として今の1年生を9月から入学させる場合は、来年の1年生も同時に入学させて、1年生を“2学年”つくる必要がある。今年が無理でも近い将来1年生を2学年作るという変則的な運用をしなければ、日本の教育は永遠にアメリカや世界から1学年遅い状態が続くことになる。

 

もう一つ議論が必要なことは、高校の義務教育化だ。9月入学にするなら、高校の義務教育化を同時に進めるべきだろう。中1ギャップといわれる学校間接続の問題とともに、大学への接続である高大接続の問題を本格的に議論するべきだろう。

 

日本の大学教育はすでに一部で変革が始まっており、より実践的でイノベイティブな教育に変わりつつある。中等教育と高等教育を結び付ける「高大接続」の議論には高校の変革が不可欠なので、これを機に考えていくのがよいと思う。

 

教育には非常に多くの側面があり、ここで指摘したことはその一つにすぎない。一時的な盛り上がりではなく、地に足のついた議論を期待する。

 

 

 

 

 

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2020年4月22日 (水)

アフターコロナ;元の世界には戻れない

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アフターコロナについて様々な人がいろいろな意見を言っている。個人の社会生活、企業のありかた、世界経済、地政学的バランスなど、どれをとってもコロナ以前の状態に戻ることはない。それどころか大きな変化の波が押し寄せてくる。

 

管理人はアメリカに住んで15年になる。その間、外から日本を見て心配したり悲観的になったりしたことは多いが、今回ほど強烈に危機感を覚えたことはない。私の危機感をまとめると次の3つになる。以下の内容は管理人の個人的な意見である。また、私は政治や経済の専門家ではないので、的外れな部分もあるかと思うので、それを前提に読んでもらいたい。

 

中国から生産を引き上げて、世界に分散させることができるか

今回の騒動で、中国に生産拠点をもつことのリスクが表面化した。共産党独裁の国に生産拠点を集中していたため、多くの産業でサプライチェーンが滞った。すでに2月の時点で日本のカーメーカーは部品メーカーが中国以外への生産シフトをするための設変に積極的に応じている。自動車以外の産業でも同様の動きが起こるだろう。中国で作るよりもコストは高くつくがリスク回避のためには必要だろう。

 

ネット・リモートでの企業活動に追随できるか

大企業ではリモートワークが広がっている。やってみて“これでも十分仕事ができるじゃないか”と感じている人は多いだろう。コロナが終息した後も、働き方や会議のやりかたなどがネットとリモートに移行していくのは間違いない。日本がやらなくても世界がそうなるので、日本もそれに合わせなければビジネスにならない。もう稟議書にハンコを押したり、契約書は原本のサインなどと言っていられない。“Face to faceで話をしないとダメだ”などと言っているオジサン部長は早々に退場いただくしかない。これをやらないと、日本は大きな井戸の中に沈んで、井戸の中ではオヤジ蛙がハンコを押しているような世界になってしまう。

 

中国の覇権を止められるか

中国が信用できないと判ったのは産業だけではない。政治や社会全体として信用できないことがわかった。その中国が、今はアメリカを向こうに回して世界の覇権を握ろうとしている。アメリカ自体は以前のような力がなくなっているので、中国の覇権を止めることができないかもしれない。そうなったら、最終手段として世界を2つに分けることになる。中国・ロシアを中心としたグループと欧米を中心としたグループだ。ネットの世界ではすでに始まっている。Googleが中国から撤退したので、百度が検索エンジンになっている。SNSはウエイボー、ネット通販はアリババだ。つまり、GoogleやYoutube、Amazonが使える世界とそうでない世界に分かれている。ただし、誰もこうなることを望んではいない。世界が2つに分かれると、冷戦状態になり、いずれ第3次世界大戦に突入する。限りなく悲観的な未来が待っている。

 

(参考)

多くの意見の中で、小林慎和さんという方のブログがとても核心をついていると思う。ぜひ皆さんも読んでみていただきたい。「アフターコロナ世界はどう変わるのか、9つの視点」https://note.com/noritaka88ta/n/n3ed4d025a62e

 

 

 

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コロナ英語

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このブログはアメリカを中心に技術の話をしているが、コロナの影響でこのところネタがない。そこで、コロナ関連で身の回りの様子を書き出してみる。

 

■コロナ英語

日本で使われているコロナ関連のカタカナ英語について解説してみたい。

  • コロナ→coronavirus (コロナはそのまま。アクセントは“ロ”)
  • ウイルス→virus (“ヴァイルス”と読む)
  • テレワーク→間違いではないが、アメリカではRemote work というのが一般的
  • オーバーシュート→言葉は間違ってないが、こんな場面では使わない。パンデミックでよい。
  • マスク→日本でいうマスクはFace mask という。
  • ステイホーム→これは文法的にまちがい。正しくは Stay at home

 

■アメリカのソーシャルディスタンス

カリフォルニアではソーシャルディスタンスが徹底している。スーパーや量販店では入場人数を制限しており、店の前に入店待ちの人の行列ができる。そこには6フィート間隔で印がつけられていて、皆間隔をあけて並んでいる。店に入るまでに1時間待ちは普通だ。店のレジにも6フィート間隔のマークがあり、レジ待ちも間隔をあけている。さらに、一部の店では客がレジのコンベアに商品を置いたら、レジから離れて会計を待つ。支払いはクレジットカードのみで、支払うときはレジ係は退避するという念の入れようだ。入店の行列が長い店は、早朝の1時間をシニア(60歳以上)や病院勤務、救急隊などの人専用の時間帯を設けている。

 

■コロナ差別

管理人をみてアジア人と認識して離れる白人は多い。気分が悪いが、この国に住んでいるとある程度は仕方がない。差別的は言葉や肉体的な被害を受けたことはまだない。(個人的には、COVIT-19ではなくトランプが言うように“中国肺炎”と呼ぶべきだとも思う。しかし、そうするとアジア人の見分けがつかないアメリカ人が、我々を中国人だと思って差別や攻撃をしてくる危険がある。中国よ、このオトシマエ、どーつけてくれる!)

 

■ニューノーマル

店の入店規制やソーシャルディスタンスは今後1~2年くらいは続くだろう。レストランは再開するが、テーブルの間隔を広くして大人数の食事はできない。仕事もリモートワークが主流になり、オフィスへの通勤は減少する。こういった様々な新しい社会生活が普通になる。コロナ以前の社会にはもう戻れない。

 

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2020年3月 9日 (月)

スタートアップを作るメリット

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「日本企業のための シリコンバレー流イノベーション」というタイトルのeブックで日本企業のイノベーションに向けてのアプローチを解説している。

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その中で、新しい研究成果の事業化のためには、アメリカでスタートアップを作ることを提唱している。今回の記事では、アメリカにスタートアップを作るメリットを解説してみたい。

 

比較するのは社内での事業化プロジェクトだ。会社によっては社内ベンチャーとして立ち上げるケースもある。社内での事業化の場合は、人的リソースの不足や社内ルールによる決断の遅さ、さらに未経験のビジネスモデルなどの要因で失敗する可能性が非常に高い。外部のスタートアップにすることで、それらの問題を回避して成功の確率を上げることができる。

 

社内ベンチャーではなくスタートアップにする利点は大きく4つあると考える。

 

 

1)経営の柔軟性とスピード感

社内での事業化を目指す場合は、日本の会社の既存のルールに縛られることになる。稟議や経理処理ルールなど、皆さんが普通だと思っていることが、世界では普通ではないことが多い。これが、スピード感のなさや柔軟性のなさとして表面化し、失敗することになる。

会社から切り離してスタートップにすることで、スピード感のある経営判断と柔軟な対応が可能になる。

 

 

2)市場へのアクセス

米国市場を目指す場合、現地の潜在客先に、早い段階からアプローチをして、試作品のデモや提供と客先からのフィードバックを基にした改良を繰り返す開発スタイルをとるのが現在の開発手法だ。

開発拠点を日本の会社から切り離して米国にスタートアップを作ることで、そういった潜在顧客へのアクセスに柔軟に対応する体制を作ることが成功につながる。

 

 

3)人材(専門性、熱意)

開発した技術が自社にとって新しい分野であれば、その専門知識をもつ人材を確保する必要がある。社内で行う場合は、社員の中から人選をしようとするので、最適な人選ができない。社内ベンチャーに社員を横滑りさせることは、実は最大の弱点になる。

スタートアップの場合は、自社が得意な部分を自社で担当して、スタートアップにはそれ以外の開発とマーケティングに集中してもらう。そのための専門家を現地で採用することで、トップレベルの人材を確保できる。必要に応じて外部専門家を活用することもできる。

 

 

4)ビジネスモデル

会社にとって未経験の分野で、新しいビジネスモデルを作る必要がある。自社で開発をすると、最終製品の生産と販売をすべて自社でおこなうことになる。

スタートアップにすることで、自社は主要部品のサプライヤーという立場になって、製造販売はスタートアップでやるケースなど、ビジネスモデルの選択肢が増える。

 

 

 

 

 

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2020年2月21日 (金)

EVの時代が来る

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カリフォルニア州の自宅の近所では、1時間でテスラを100回見かける。嘘ではない。昨年テスラの数が爆発的に増えた。ベンツが好きな中国人も最近はテスラを買っている。アメリカ人の友人も何人もテスラを持っている。

 

あまりに急激にテスラが増えたので、自分で数えてみた。買い物などで出かけるときに、一般道を走りながら見かけるテスラを数える試みだ。時間帯にもよるが、去年7月頃に何度かやってみたときは、15分間で7~8台のテスラを見かけた。1時間あたりに換算すると30台くらいだ。次に10月頃にもう一度数えてみると、10分間で12台は見かけるほど増えていた。1時間に70台だ。その後は数えていないが、年が明けてさらに増えているように感じる。

 

2019年の米国の新車販売台数は約1,700万台だった。自動車販売は好調を維持している。その中でEV(電気自動車)は24万台が販売された。しかもEVの中ではテスラが8割のシャアを占める。

 

2019年のテスラの世界での販売台数は 367,500台で、これは同社の過去2年間の合計を上回る。テスラが販売を伸ばした要因は低価格のモデル3の量産体制ができたことと、米国では連邦政府や州政府の補助金があったことだ。

 

米国の中でも特にカリフォルニア州は充電ステーションなどの整備が進んでおり、他の地域よりもEVが普及する環境が整っている。そういった事情もあり、カリフォルニアでテスラが売れている。

 

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EVの販売台数は、米国全体の自動車販売台数の1.4%だが、今後EVが自動車産業の主流になることは間違いない。

 

理由はいくつかある。まず第一に、エネルギー効率が良い。ガソリンエンジンの車は原油を精製してガソリンに加工し、それをタンクローリーで販売店(ガソリンスタンド)に輸送する。車の中では内燃機関(エンジン)で燃焼エネルギーを運動エネルギーに変換する。それをトランスミッションで機械的に減速して動力にする。一方EVでは、原油を使って火力発電した電力を送電線を使って輸送して、充電器で車のバッテリーに蓄える。バッテリーの電力を取り出してモーターを回すことで動力を得る。それぞれのエネルギー効率を計算して掛け合わせると、ガソリン車のエネルギー効率は約8.6%で、EVのエネルギー効率は約35%になるという。つまり、EVのほうがガソリン車よりもはるかにエネルギー効率が良い。

 

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二番目の理由は、車体の構造が単純であることだ。ガソリンエンジン車は1台に3万点の部品が使われるという。非常に複雑な構造をしている。一方、EVはシャーシーにバッテリーパックを敷き詰めて平らな床を作る。そのうえに車軸とモーターを取り付けて、あとは座席やハンドル等を組み付ける。非常に単純な構造だ。エネルギー効率だけを議論するとPHEV(プラグイン・ハイブリッド)や燃料電池車も競争できるが、車体構造の単純さで見ると、EVが断然有利だ。

 

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日本ではEVが普及するのはまだ先のことだと感じている人が多いが、世界はすでに動き出している。もちろん日本を含めて世界の自動車メーカーはこの状況を分かっているはずだが、取り組みが遅れているように見える。

 

 

 

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2020年1月17日 (金)

e-ブックのご紹介

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これまでのブログ記事にケーススタディを加えたものが e-ブックになりました。e-ブックサービスの“スキルアカデミー”から出版されます。

 

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タイトルは、「日本企業のための シリコンバレー流イノベーション」

このe-ブックは4部構成で、部ごとの購読ができます。興味のある方は、下のリンクからスキルアカデミーのサイトにいき、e-mailを登録したうえで購読してください。

 

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日本でオープンイノベーションが話題になるようになってしばらくたつが、なかなか成功したという話をきかない。日本のオープンイノベーションは的外れだ、日本企業のオープンイノベーションは中身がない、などという言葉もネットにあふれている。オープンイノベーションはこのままバズワードになってしまうのだろうか。

 

本書は15年間アメリカに住んで先端技術の調査をしてきた著者が、スタートアップや大学の研究室との交流をもとに、米国でのイノベーションの実態を解説する。そして、独自の視点でオープンイノベーションを分析し、日本企業ができるイノベーションのアプローチを提唱する。

 

第1部 シリコンバレーの真実

第1章 シリコンバレーの秘密

第2章 シリコンバレーのイノベーション

 

第2部 オープンイノベーションのウソとホント

第1章 間違いだらけのオープンイノベーション

第2章 オープンイノベーションはだれのもの

 

第3部 オープンイノベーションの成功事例

第1章 スタートアップのオープンイノベーション(ケーススタディ)

第2章 オープンイノベーションの入り口は米国の大学にある

第3章 オープンイノベーションのプラットフォーム

 

第4部 2030年の技術社会 (2月公開予定)

第1章 自動車業界のパラダイムシフト

第2章 地域社会のエネルギーインフラ

第3章 情報コンテンツの消費形態

第4章 DNAが設計図になる

 

 

 

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2020年1月12日 (日)

CES 2020 概要

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今年もラスベガスでCESが開催された。15年間この展示会に通っている管理人が、独自の視点で今年のCESを解説する。

 

全体の印象

 

これまで家電の王様だったテレビがその地位を失い、AIと5Gが家電をけん引する時代になった。テレビは中国メーカーが主要なサプライヤーになっている。家電の分野では中国企業のプレゼンスがますます強くなり、韓国や日本メーカーは存在感が薄れている。

 

ウエアラブルやデジタルヘルスでは、大きな進展はないものの、細かいところで新技術が出てきているので、今後への期待感は継続している。

 

自動車関連は、カーメーカーの展示がEVと自動運転に絞られてきたので、見るほうは分かりやすくなってきた。陸上の乗り物だけでなく飛行する乗り物も出てきている。

 

今年は来場者のなかに中国人が非常に多いと感じた。しかも、若い人が目立つ。韓国人も多い。日本人もリーマンショック以来最多だと思う。給料は上げないけど、経費は使っていいという傾向が続いているようだ。

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分野ごとの特徴を以下にまとめる。

 

総合家電の分野では、今年は過去10年で最も進歩が見られなかった。技術革新のコアがAIと5Gになったことで、製品の表面では変化が見えにくくなっている。これまで世界の家電メーカーを牽引してきたSamsungとLGが目新しい技術を出せずに、去年の焼き直しのような展示だった。全体的に人混みが少なく、以前に比べて少し活気がない。

 

テレビの展示は中国メーカーに移って、韓国メーカーも日本メーカーも、普通のテレビの展示はほとんどない。

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自動車関連では、出展しているカーメーカーの数は少し減っているが、展示内容がEVと自動運転に集約されてきたので見るほうもわかりやすい。North Hallの今年の目玉は電動飛行Uber を展示したBellとHyundaiだ。自動運転は、陸上の乗り物だけでなく、飛行する乗り物へと拡大している。

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ウエアラブル、睡眠、デジタルヘルスといった分野では、衝撃的と言えるような新技術はなかったが、細かいところで注目すべき進歩が見られた。カフレスの血圧モニタや非侵襲の血糖値モニタなど、長年にわたり待ち望んできたデバイスが出てきた。

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今年も、Eureka Park というスタートアップのコーナーが一番活気がある。最新の光学イメージング手法からジャガイモに刺すBluetoothと意味不明なものまで、見ていて飽きることがない。また、今年は数は少ないが、日本のスタートアップも20-30社が出展していて、頼もしい気持ちになった。

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AR/VRやロボット、ドローンの分野では、今年は脳波を測定するデバイスが増えていた。その中で、Harvard 大学からのスピンアウトがデモしていた、上腕の筋肉の動きを計測して、義手の指を本人の意思通りに動かす技術は要注目だ。

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CES2020の詳細のレポートはこちら

CES 2020 展示会レポートのご案内

分野ごとの今年の傾向、独自の視点で全体のトレンドを総括、約120社の展示内容と900枚の写真データをパッケージにしてお届けします。

https://www.technoscape.us/CES2020%20Report-1.html

 

 

 

 

 

 

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