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2013年11月 7日 (木)

オバマ・ケアの功罪

アメリカで来年1月1日から始まる全国民加入の医療保険の内容がようやく判ってきた。変わると言っても、個人の医療保険だけ。中堅以上の会社に勤めている人は企業の団体保険に入っているので、これまでと大きな変化はないだろう。それでもアメリカ人の16%が保険に未加入の状態だ。

これまで、個人向けの医療保険は、既往症のある人は加入を拒否されていて、健康な人だけが保険に加入できていた。コレもヘンな話で、本当に保険が必要な病気の人が保険に入れない仕組みになっていた。(企業で加入する団体保険は、既往症があってもOKだ。)それを改革して、既往症のある人も全員が個人の医療保険に加入できる仕組みを作ったのが、オバマ・ケアの目玉の一つ。

蓋を開けてみると、個人の医療保険は4割くらい高くなった。一番安いプランで、年間約50万円強の保険料を支払うことになる。それでも補償内容は、免責がおよそ45万円、自腹の支払額上限が65万円だ。これまでの個人保険は同様の補償内容で年間約60万円の保険料を支払っていた。どっちにしてもヒドイ内容だ。

日本でサラリーマンをやっていたときは、家族4人分として年間約60~70万円の保険料を支払っていた(天引きなので、支払っているという感覚はなかったが、実際には支払っていた。皆さんもそうですよ。)その補償内容は、自己負担1割で、しかも医療費自体が国にコントロールされているので全体に安い。

今回のオバマ・ケアで保険料が高くなった理由は、病気を持った人も保険に加えたからだ。互助の考え方からするとこれが当然で本来の姿のはずなのだが、保険料がとんでもなく高い。オバマ改革で個人保険は州政府が管轄することになった。しかし、保険を提供するのはこれまで通り私企業の保険会社だ。保険会社からすると、企業の団体保険は人数や年齢分布などから、医療費支払いのリスクが予測できる。個人保険の場合はリスクの予測ができないので、病気の人は排除して健康な人だけ加入を認めて、保険会社側のリスクを抑えて利益を出してきた。それが来年からは病気の人も加入させなさい、と強制されるので、保険料を釣り上げてくる。オバマ・ケアはこの金額にまで枠をはめていないので、保険料は高くなる。その代り、低所得者には州政府が補助金を出して実質的な保険料を下げている。上に示したのは、補助金がもらえない場合の50歳代の1人分の金額だ。

そもそも、アメリカの医療費は出来高払いで、医療機関が勝手に値段を決める。だから、医療費がとんでもなく高いし、かかる病院によって治療費の金額が違う。一見、市場原理の自由競争のようにみえるが、保険会社が間にいて治療内容や治療費に介入しているので、まともな市場原理は働いていない。本来なら連邦政府が保険会社の影響力をなくして、医療費を下げる必要がある。それができなくて、うわべだけの制度改革をしたので、今回のような不公平極まりない状況が生まれた。

もっとも、既存の保険会社をつぶすようなことは、さすがのオバマ大統領もできなかったのだろう。アメリカ経済に与える影響と、選挙の票を失うことを考えれば、誰が大統領でもそんなことはできない。(アメリカの主要都市で、一番立派なビルには保険会社が入っている。それくらい、保険会社は巨大な存在になっているということだ。)

オバマケアは、アメリカが本当に改革しなければならないことの、ほんの一部に過ぎない。これで終わったのでは、改悪にしかならない。アメリカで年収別の平均寿命(こんなデータは実際にはないと思うが)を調べると、きっと比例関係になると思う。つまり、金持ちだけが長生きできるということ。

公平で、本当に"Affordable"な保険制度にするには100年かかるかも知れないが、後続の政権も改革を続けてほしいと願っている。

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