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2016年12月23日 (金)

SamsungのAIとQD

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今月(201612月)、サンディエゴで開催されたFrontier Tech Showdownというイベントで、サムスンが面白い話をした。キーノート・スピーチの一つに、“Future of Artificial Intelligence, Augmented Reality and Virtual Reality and Samsung’s New Challenge”というのがあった。その講演の中で、サムスンの研究部門の副社長が以下のような説明をした。

 

まずAI(人工知能、機械学習)について。

Samsungは、AIはコア技術で、ロボットやVR/AR、3Dプリンターなどの中心にあるものと位置づけている。SamsungAIを開発する最大の目的は、スマホのアプリを簡略化すること。現在は多くをGoogleのデータに依存している(もちろんGoogleとは良好な関係を保っている)。これが続くと、Samsung製品の多くの部分をGoogle にコントロールされることになると危惧している。独自のAIを開発することで、Googleへの依存を減らすことが必要だと考えている。AIは家電やスマホ、ヘルスケア、AR/VR、スマートデバイス、Samsung Payなどに展開する。”

 

つぎに、VR/AR用ディスプレイについて。

“ディスプレイの分野ではOLEDの開発はやめて、QDに注力することに決めた。ARディスプレイとして、網膜書き込みとホログラムを開発中。Meta Vision社を買収する可能性もある。スマホでのLight Field 3D表示はすでに開発済み。アイトラッキング付きで、メガネ無しの3D表示ができる。政治的な理由で発売はしていない。”

 

AIについての彼らの危惧は当然だし、経営の根幹を脅かしかねない重大な課題だろう。Googleは世界中のユーザーのデータを集めていて、エレクトロニクスメーカーはそれを使うことで機器の価値を上げている。このままいけば、スマホだけでなく自動車や家、そして都市インフラまでGoogleのデータに依存することになりかねない。

 

ディスプレイについては、今年初め頃からサムスンはOLEDの開発を止めるという報道が流れていた。サムスンはスマホのディスプレイでOLEDを成功させ、LGはテレビでOLEDを成功させている。しかし、OLEDにも課題や弱点が多く、すべてのLCDに置き換わることはない。そこでサムスンが目をつけたのがQD(量子ドット)だ。確かにQDEL発光素子ができればOLEDLDCを駆逐する可能性はある。しかし、QDの開発にはまだ相当の時間がかかると思われるので、サムスンはそれまでの間を大型はLCD,中小型は現状のOLEDでしのぎながら、QDの開発を成功させる自信があるのだろう。

 

網膜書き込みとホログラムはまた別の技術領域で、こちらも非常に興味深い。講演の中で、Magic Leapの光学系はコストが高くて実用化が困難とコメントしていた。サムスンはそれとは異なる光学系を採用するらしい。

 

一方で、表示パネルに関しては、LGでもこのところ動きが激しい。今月に入って、LG Displayが大きな組織再編を発表した。これまであった5つの事業部(TV, OLED, IT, mobile, AD)を、新たな3事業部(TV, IT, mobile)に再編して、OLEDの開発をより強力に進める体制にしたという。具体的には "mobile" 事業部がプラスチックOLEDの開発、"TV" 事業部が大型OLEDパネル、"IT" 事業部がLCDの開発を担う。

 

さらにLG DisplayApple, Google, Microsoftと、“折りたたみディスプレイ”で協力すると発表した。おそらく、二つ折りのディスプレイで折りたたんだ状態でスマホのサイズ、広げるとタブレットのサイズになるようなデバイスだろう。

ここにきて韓国の2大ディスプレイメーカーの戦略が大きく分かれてきた。

SamsungOLEDの開発をやめて量子ドットディスプレイに注力する。(スマホのOLED事業は継続して、大型TVQDでいく。)

LGOLEDの開発をさらに加速して、中小型パネルもOLEDでいく。

 

さらに日本では、ジャパンディスプレイ(JDI)が産業革新機構から750億円の支援を得て、JOLEDを子会社にすると発表した。これによって、JDIはこれまでの中小型に加えて大型TVの市場も抱え込むことになる。なかなか厳しい戦いになるだろう。

 

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