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2020年5月 3日 (日)

9月入学の議論は正しくされていないのではないか

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新型コロナの自粛が長引くなかで、日本では9月入学の議論が急に盛り上がっているが、果たして正しい議論がされているのだろうか。9月入学にすること自体は良いと思うし、コロナの騒動で一機に移行するのも悪くはないと思う。

 

しかし、日本のテレビで言われている議論を見ると、大事なことがいくつか抜けている。ワイドショーの芸能人コメンテーターや政治や教育の“専門家”と言われる人たちは何も分かっていないのに無責任なコメントを公共の電波に乗せている。非常に心配だ。

 

アメリカの教育制度は K12 と言われ、幼稚園の最終1年から高校までを義務教育としている。カリフォルニア州の公立校では小学校6年、中学2年、高校4年だが、私立では中高一貫のところも多い。以前は中学校をジュニアハイスクールと呼んでいたが、今はミドルスクールと呼んでいる。これは、中学を高校へのつなぎの教育と位置づけて6年生から8年生を対象として、協働学習などに重点を置いている。

 

K12の新学期は9月からはじまり、6月で学年が終了する。KはKinderで幼稚園の最終学年のこと。小学校1年生には、その年の12月までに6歳になる子供が9月に入学する。これが実は日米で大きな違いになっている。アメリカの子供たちは、日本の子供たちより半年早く就学している。つまり、現状で日本の子供たちはアメリカの子供よりも半年遅れて入学している。

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さて、いま日本で議論が盛り上がっている9月入学への変更には、抜けている部分が多い。まず、現在の日本の議論は、4月からの新学期で授業ができていないから(あるいは格差がついているから)“この際5ケ月遅らせて9月はじまりにすればいいじゃないか”というものだ。これは大変な間違いで、これをやると日本の子供たちはアメリカの子供よりも1年遅れて就学することになる。今年の9月に入学させるべきは、今の1年生ではなく来年の1年生なのだ。

 

仮に今年9月を新学期として今の1年生を9月から入学させる場合は、来年の1年生も同時に入学させて、1年生を“2学年”つくる必要がある。今年が無理でも近い将来1年生を2学年作るという変則的な運用をしなければ、日本の教育は永遠にアメリカや世界から1学年遅い状態が続くことになる。

 

もう一つ議論が必要なことは、高校の義務教育化だ。9月入学にするなら、高校の義務教育化を同時に進めるべきだろう。中1ギャップといわれる学校間接続の問題とともに、大学への接続である高大接続の問題を本格的に議論するべきだろう。

 

日本の大学教育はすでに一部で変革が始まっており、より実践的でイノベイティブな教育に変わりつつある。中等教育と高等教育を結び付ける「高大接続」の議論には高校の変革が不可欠なので、これを機に考えていくのがよいと思う。

 

教育には非常に多くの側面があり、ここで指摘したことはその一つにすぎない。一時的な盛り上がりではなく、地に足のついた議論を期待する。

 

 

 

 

 

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