リモートワークと働き方改革(1)
コロナの影響で日本でも大企業を中心にリモートワークが広がった。この流れはコロナが収まっても続いていく。世界の企業では、すでにリモートワークが定着しているところも多い。
会社に行かなくても仕事ができるなら、地方への移住が増えたり、企業の東京以外への移転も加速されるだろう。地方への移住は、個人の働き方と同時にその人の生き方を変えることを意味する。
私が脱サラして会社を作ったのはもう10年も前のことだ。その頃の日本企業は、バブル崩壊後の20年を内部留保の蓄えに使って、社内では業務改革という名の会議が延々と続き、コンプライアンスという名目の書類に追われる状況だった。
私が会社を辞める決断をした理由は別にあるのだが、その時に“自分のこれからの働き方”を考えたことは事実だ。自分はどこに住んで、どういう暮しをして、どういう働き方をしたいのだろうか、ということを原点に戻って考えた。その結果が、日本ではなくてアメリカだった。サラリーマンではなくて自営のコンサルタントだった。
その頃は、残業ゼロとか育休取得だとかは言っていたが、働き方改革という言葉はあまり言われていなかったと思う。いま思い返してみると、自分はその時に働き方改革を一人で勝手にやってしまったということになる。
そのころに考えていたことを今のコロナの状況と重ね合わせてみると不思議なほど合致するので、皆さんに紹介してみたいと思う。
■ 私のリモートワーク
コロナの影響で突然リモートワークになった人たちは、上司も部下もそれぞれの立場で困ったり戸惑ったりしていると思う。上司は部下を管理しないことが不安で仕方がないと感じている。部下は管理されないことが不安だと思う。
日本の会社は労働の管理を時間でやっているので、時間で管理できないリモートワークになると、部下の労働管理をどうやっていいかわからない上司も多いだろう。一日何回も部下に対して、仕事をしているかの確認のラインを送る上司もいるとか・・・
部下も会社の机でパソコンに向かっている時間が長ければ長いほど“仕事をしてる”アピールができるので安心だったが、リモートワークになると成果だけしかアピールできるものがなくなる。
これは、私が独立してコンサルタントを始めたときから10年間闘い続けていることだ。コンサルタントなので、クライアントに提供する成果だけが評価の対象になる。究極のリモートワークだ。どれだけ時間をかけたかはクライアントには関係ない。クライアントが求めるものを提供できて当たり前で、継続して契約してもらうためにはそれ以上のものを提供しなければ、すぐに契約を切られる。しかも、ここまでやれば十分という“合格ライン”がないので、いつも不安でしかたがない。
リモートワークのホームオフィス
上司の立場でリモートワークを使いこなすためには、部下を成果で評価する能力が必要だ。部下に成果を出させるためには、求める内容と目標レベルを部下に明確に示してやることも必要だ。さらに成果で評価するためには、仕事の内容を上司が理解している必要がある。技術系では上司よりも部下の方が専門知識を持っている場合がある。そんなときは、市場や客先のニーズに基づく方向性と達成レベルを明確にすることで、部下を指導することができる。
部下の立場でリモートワークを成功させるには、上司が何を求めているのかを正確に把握することから始める。ほとんどの上司は自分の指示を明確に伝えることができないと思った方が良い。言われたことだけを聞いて納得してはいけない。言葉の裏にある本当のニーズを理解する努力をする必要がある。それが判れば、あとはやるだけなので、そんなに難しくはない。
コンサルタントの場合も同じだ。クライアントの要求を正確に理解することが、コンサルタントの第一歩だ。クライアントも彼らの要求を正確に伝えられないことが多い。そんなときは、こちらから質問を繰り返して本当のニーズを引き出す努力をする。これを間違って理解すると、出した成果が評価されないという最悪の事態になる。コンサルタントとしては死活問題になるので必死だ。
(づづく)
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