アメリカで見つけた、おもしろ新技術(5); サハラの蟻
第5回はサハラの蟻について。灼熱の砂漠にアリが生息していることも驚きだが、それを研究している物理学者がいることにも驚かされる。
サハラ砂漠にシルバーアントという蟻が生息している。普段は砂の中に潜んでいるが、日中の10分間だけ砂の上に出て食料を探すという。日中の砂の表面は70℃以上になる。体が小さく熱容量の小さいアリが灼熱の砂の上にでるのだから、一瞬で焼け焦げてしまいそうだが、この蟻は生きている。
(Image: Vincent Amouroux, Mona Lisa production/ Science Photo Lab)
ニューヨークにあるコロンビア大学の先生は、この蟻がなぜ灼熱の環境で生きていられるのかを研究している。この蟻は体が細かい毛でおおわれていて、その毛のおかげで体表温度を10℃くらい低く保てるという。
秘密は毛の構造にあった。この蟻の毛は中空構造になっている。その中空構造の断面サイズが熱(つまり遠赤外線)の波長よりも小さく、熱線は毛の内部に吸収されその後内部での反射を繰り返すという。そのため、蟻は体温を低く保つことができるのだそうだ。
(Image: Norman Nan Shi and Nanfang Yu, Columbia Engineering)
先生の研究はこれで終わりではない。シルバーアントの毛の中空構造を人工的に再現することで新しい素材を作ったのだ。ナノサイズの中空構造をもった材料をペンキにしてビルの屋上の塗装をすると、高い断熱効果があるという。その材料を製造販売するスタートアップも立ち上げた。将来は断熱効果の高い住宅や、炎天下でも社内が熱くならない車などができるかもしれない。
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