アメリカでのコロナ・ワクチン接種を体験して見えてくる日本との違い
アメリカでは昨年12月からワクチン接種が始まり、すでに7千万人が少なくとも1回目の接種を受けている。2回の接種が完了した人は3千8百万人を超え、18才以上の人口の15%弱に達している。感染者の累計は2千9百万人なので、合わせると人口の2割がすでに抗体を持っている計算になる。3月は1週間に1000万人のペースで接種が行われている。
今回は、アメリカでの接種体制やフォローアップ体制について、私の家族が接種を受けた状況をまとめてみる。
まず、連邦政府のCDCが接種の優先順位を示しており、それぞれの州政府そして自治体はそれを基準にして、接種の制度を作っている。CDCが示している優先順位をおおまかに示すと以下の通り。現時点で、Phase1B, Tier1を実施している。
Phase 1A |
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医療従事者、介護施設、透析センター、訪問介護、検査ラボ、65才以上 |
Phase 1B |
Tier 1 |
食品、農業従事者、教育機関・保育施設 |
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Tier 2 |
65才-74才、刑務所、ホームレス、交通・流通従事者、一部の製造業 |
Phase 1C |
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50才-64才、16才-49才 |
接種場所は、基幹病院や特設会場から始まって、2月終わりから一部の地域ではドラッグストアでの接種も行っている。球場やテーマパークなどの駐車場に大規模なドライブスルーの接種会場も設けていて、”スーパーサイト” と呼ばれている。すべて予約制で、自治体や医用機関が運営するウエブサイトから事前に申し込んで予約をする。
私の場合はKaiser Permanenteという、医療保険と病院が一体になったサービスに加入しているので、そこのサイトから予約して接種に行った。
まず、予約の段階で持病や過去のアレルギー、最近他のワクチンを接種していないか、COVID-19に感染したことがあるか、あるいはその症状があるか、そしてモノクローナル抗体治療を受けていないかと、ウエブ上で質問に答えたうえで予約の画面に行ける。
予約の日時に病院に行くと、接種会場の入り口で、予約時に答えたのと同じ質問の用紙を渡されて、そえに回答を記入する。
接種会場は、大きめの会議室で、5~6個のテーブルに看護師が1人づついて、そこで接種を受ける。そこでは今度は対面で同じ質問をされて、それに答えていく。そしてワクチンにはリスクがあることを説明され、こちらから質問があるかを聞かれる。
接種が終わると、同じ部屋に待機場所があり、そこで15分間待つように言われる。同時に2回目の接種の予約を取るブースが設けられていて、そこで次の予約を取ることができる。
接種が終わったら、今回の接種の情報が記載された”接種票”を渡されて、次回に持参するように指示される。接種票には製品名の”Pfizer BioNTech” とロッド番号、有効期限、接種日と接種時間、接種場所が明記されている。
接種後のフォローアップとして、 V-Safe というスマホのアプリのパンフレットを渡された。これはCDCが運営するワクチンの副反応情報を収集するアプリで、登録するかは任意だ。これに登録すると、アプリからメッセージでその日の容態確認をもとめられ、接種後の痛みや体調を報告する。接種後の最初の1週間は毎日の報告で、その後5週間程度は週に1回の報告でよい。その後は3ケ月後、6ケ月後、そして12ケ月後に報告する。
報告内容には、ワクチンを受けた人の情報(年齢、性別、人種、持病など)とワクチンの情報(メーカー、ロッド番号、他)がひもづけられているので、数千万人のリアルワールドエビデンスが得られることになる。リアルワールドエビデンスは、CDCにとっても製薬メーカーにとっても強力なツールになるので、CDCの戦略が見て取れる。
日本との大きな違いは、アメリカはすでに全人口分のワクチンを確保していることだ。日本は、まだ人口の10%分も確保できていない。そして、ワクチンの対象者になっているかどうかをオンラインで確認でき、自分が対象になったら連絡がくるように登録するシステムができている。予約はすべてオンライン(一部電話もあり)であることや、看護師が注射できること、CDCが統括をしてデータ収集もきちんとやっていること、そしてワクチンの治験の情報を公開していることなど、日本との違いはたくさんある。また、日本のメディアは過度に副反応の不安をかきたてる報道に終始しているが、アメリカでは(副反応に注意はしているものの)ワクチン接種に肯定的な報道が多い。
日本でも早期にワクチンが国民にいきわたり、多くの人が安全に接種できることを祈るばかりだ。
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