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2021年9月26日 (日)

45歳定年の本質

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「45歳定年制の導入」というサントリー社長の発言が波紋を呼んでいる。定年の年齢が伸びている日本の社会に逆行して、経営者の利益だけを主張しているようにも聞こえるが、話はそう簡単ではない。以下に私なりの解説を試みる。

 

誤解を恐れずに言うなら、会社側の本音はこうだ。新卒で20年働けば45歳くらいだ。20年同じ会社にいれば、仕事ができる人とできない人が見分けられる。仕事ができない人は替りがいくらでもいるので、給料の安い人を雇いたい。逆に仕事ができる人には、給料を増やしてでもいてもらいたい。

 

45歳で全員クビだと言っているワケではない。言い方をかえると、45歳で再雇用のフェーズに入るということだ。再雇用になると給料が減るのでそれを覚悟してください。ただ、会社が認める能力のある人は、雇用契約を変更して給料が上がる場合もあります、ということだろう。さらに視点を変えて見ると、現時点でも45歳~50歳で早期希望退職のインセンティブが最大になる人事制度を採用している会社はたくさんある。実はもう始まっているのだ。

 

日本の企業は、定年を65歳まで延長して、さらに70歳までの雇用が努力義務になっている。しかし、定年間際や再雇用して給料を減らしても、仕事をせずにブラブラしている社員がいる(多い)。これをフリーライダーと呼ぶ。会社が本当に欲しいのは、プロフェッショナルとして働いてくれるひとであり、フリーライダーではない。

 

一方、社員の立場で考えると、60歳まで同じ会社で働くことを前提にして、住宅ローンや教育資金をまかなうつもりでいる。転職なんか考えたこともない。会社では、できるだけチャレンジをしないで、大きな失敗をしないように働いていれば、60歳までの収入が保証されている。安心だ。サラリーマン時代の私自身も頭のどこかでそう思っていた。程度の差こそあれ、会社員は皆そう思っているのではないだろうか。

 

こうした社員の過度の依存意識が、日本企業の生産性を低下させている一つの要因になっていると感じる。戦後から70年続いた日本独特の終身雇用は、高度成長期には最大限のメリットが発揮されたが、直近の20年ではデメリットの方が目立っている。これを改善するためには、社員がモチベーションを高めて、クリエイティブな仕事をするようになることが必要だ。つまり、サラリーマンといえども、社員ひとり一人がプロフェッショナルにならなければならないということだ。

 

社員が会社への過度の依存をやめて、常に独立を意識しながら、プロフェッショナルとして仕事をするようにならなければならない。そのためには、定年を延長するのではなく、逆に短くする方が理にかなっている。

 

プロフェッショナルとは

 

ある人がこう言っていた。プロフェッショナルを日本語で言うと「自己責任型独立仕事人」なのだそうだ。自己責任型というところに重みを感じる人が多いだろう。重みを感じた人は、会社への依存意識が強いからではないだろうか。プロフェッショナルの反対は、「会社に依存して自分では責任を取らなくてよく、大した成果も出さない人」となる。

 

45歳定年は怖くない

 

サラリーマンをやっていると、会社の看板がなくなったときに自分が世の中で通用するか、とはなかなか考えない。会社の中ではそこそこ仕事ができていると自信を持っている、という人も多いのではないだろうか。しかし、社内の調整やコミュニケーションは、社内独特の言葉や文化そして人脈で成り立っている場合が多い。これは、社外では全く通用しない。世の中では、何の役にも立たないと思った方が良い。

 

定年が45歳になったとすると、それ以降は会社が守ってくれないので、自分で稼ぐ能力を身につけなければならない。つまり、サラリーマンと言えども、独立して社外でも通用する人材になれ、ということだ。45歳の定年までに、社外でも通用するプロフェッショナルになれば良いということだ。私はこれを「ソロプレナー」と呼んでいる。

 

社外で通用するためには、自分の専門分野で世間からみてプロフェッショナルと言えるレベルの知識とスキルがあることだ。知識やスキルがプロフェッショナルと言えるのは、“人に教えることができる”(あるいは“人の手本になる”)レベルでなければならない。(*1) 人並にできているというレベルではダメだ。

 

私が今年初めに出版したeブック「ソロプレナーという働き方 ~サラリーマンが副業で始める個人事業~」(*2) で、プロフェッショナルになるために必要な知識・スキル・コンピテンシーについて詳しく解説しているので、興味のある方はこちらを参照いただきたい。同書では、“サラリーマンがプロフェッショナルになって、副業としてスモールビジネスを始めよう” という趣旨で解説をしている。

 

つまり、サラリーマンをやりながらでも、副業ができるくらいの能力を身に着けていれば、45歳定年も怖くないということだ。若いときから、そういう意識でサラリーマンをやるべきなのだ。

 

ただし、今のサラリーマン全員に一斉にこの制度を適用すべきではない。60歳定年のつもりで働いている社員に対しては、基本的にはそれを保証すべきだろう。途中でルールを変更するのはフェアではない。早期希望退職の制度は今でもあるのだから、希望する人はそれを利用して独立や転職をすることができる。これから採用する人に対して、採用の時点で定年の年齢を明示したうえで採用すればよい。(注:個人の意見であり、法律に適合しているかは未確認)

 

 

サラリーマンの副業は増えるのか

 

パーソル総合研究所によると、55%の企業が正社員の副業を容認しているという。前回の2018年の調査から3.8ポイント上昇している。(*3)

 

 

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自社の正社員の副業を企業が容認・禁止している割合(出典:パーソル総合研究所)

 

また、副業者を受け入れる企業も多いようで、その理由は「多様な人材確保が可能だから」(26・4%)がトップ。これを規模別にみると、大手企業では人材確保よりも「新規事業の立ち上げ/推進」や「新たな知識・経営資源の獲得」「オープンイノベーションの促進」など、新規事業やイノベーション関連の理由が目立った。(*4)

 

副業を容認している企業が増えているが、社員に対して特別な働きかけをしている企業は少ないようだ。副業してもいいけど、積極的に勧めてはいないといったところだろうか。実はここには、改善の余地があると思う。

 

体脂肪計のタニタは4年前から「個人事業主」の制度を導入して、成果を出し始めている。希望する社員が会社を退職して、個人事業主として退職前と同じポジションで会社と業務委託契約を結ぶというものだ。いまでは社員の約1割がこの制度を利用している。制度を利用した個人は収入が増えて、仕事の幅が広がり、実績も残しているようだ。そして、タニタ以外の仕事にも手を広げている人もいるという。

 

兼業や副業の働き方として、タニタの事例は完全に会社から独立するケースだが、パーソルの調査は、会社員の地位を維持したまま副業をすることを認めている会社が半数以上あるということだ。

 

サラリーマンが会社との雇用関係を維持したまま副業をして成功するためには、その人の能力やスキルが特定の分野で秀でていることが求められる。すでにプロフェッショナルな仕事をしている人は、その気にさえなれば副業ができる状態にある。まだプロフェッショナルな領域になっていない人は、自分の専門分野でスキルを磨くことによって、プロフェッショナルを目指すことができる。

 

プロフェッショナルな仕事をしている人が社外の仕事(副業)をするということは、その人のスキルをさらに高めるといいうことで、それは同時に会社の業務にも還元されて、会社でもさらに成果を出してくれることになる。つまり、副業は社員と会社の両方にメリットがある。

 

会社側から積極的に社員に副業を奨励したり、副業ができる社員を増やすための社員教育をすることが、結果として業績を伸ばすことにつながることになるし、フリーライダーを減らすことにもつながる。企業の人事担当の方には、ぜひ真剣に考えてみていただきたい。

 

 

 

(*1) 株式会社スキルアカデミー、「キャリアビルダー “能力プロファイリング編” 」より

(*2) 株式会社スキルアカデミー、「ソロプレナーという働き方~サラリーマンが副業で始める個人事業~」

(*3) 出展:日刊工業新聞 2021年8月13日

(*4) 出展:ITmedia 2021年08月12日

 

 

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