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2021年10月 4日 (月)

日本の購買力

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眞子様とKKさんのニューヨーク生活について、日本のマスコミが盛り上っているが、本質を見ていない議論に、いまの日本の危うさを感じている。

 

ニューヨークの家賃や物価が高いことや、新任の弁護士の給料が2千万円ももらえることをことさらに取り上げている。その裏には、日本は物価が安くて住みやすいので安心だ、という心理が隠れている。これが大きな間違いなのだ。

 

アメリカは物価も高いが給料も高い

 

ニューヨークに限らず、アメリカの主要都市では物価が高い。シリコンバレーの家賃はおそらくニューヨークと同じかそれよりも高い水準だろう。ロサンゼルスとその周辺も家賃や住宅価格が高騰している。もう若い人が家を買うのは大変な状況になっている。

 

アメリカでは物価も高いが、給料も高い。弁護士に限らず、博士号を取得した新卒のエンジニアの初任給は$150,000から$200,000だ。日本円で1,600万円から2,200万円だ。弁護士だけが特別なワケではない。アメリカは最低賃金の水準も高い。レストランのパートタイムの最低賃金も1時間$15(約1,660円)だ。

 

日本の問題は給料が上がらないこと

 

問題は、世界の中で日本だけが物価が安く、給料も安い状況になっていることだ。過去20年間、日本の企業は内部留保を増やすばかりで、将来への投資や従業員の給料には金を使ってこなかった。その結果物価は横ばいで、給料は実質減という状況が続いている。

 

また、政府や日銀は常に低金利と円安の政策をとっていて、1ドル100円から110円の為替レートを維持してきた。自動車や家電、一部の素材などの輸出産業はそれで潤ったが、日本への投資が増えることはなかった。

 

海外との差が広がる

 

その間に米国もアジアも好景気が続いて、物価も収入も上昇を続けてきた。OECDの統計では、日本の平均賃金は韓国よりも低い。日本だけが取り残された形で、日本人は貧乏な国民になっている。

 

 

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(出展:OECD統計データ)

 

問題は、日本の社会がこの事実を直視せずに放置していることだ。個人の生活としては、日本の国内で働いて国内だけで消費していれば、この問題は見て見ぬふりができる。海外旅行は高いけれど、頻繁にいくワケではないので気にならない。

 

しかし、企業の経済活動ではそうはいかない。海外からの調達や情報収集、出張や駐在員の派遣など、海外とのかかわりは無視できない。

 

このブログでも10年も前から日本人の給料が世界に比べて安いことを指摘してきた。そしてここにきて、さまざまな場面で弊害が出ているのだ。

 

直近の事例では、日本企業にアメリカの大学との共同研究を持ちかけても、費用の高さに驚いて、ほとんど成立しない。例えば、カリフォルニア大学と共同研究をするためには、最低でも年間1,500万円は必要だ。

 

別の話では、日本からの駐在員の家賃が日本の家賃の2倍はしているので、本社の人事部の理解が得られないケースがある。家賃の安い地域は治安が悪いという事情も理解されにくい。

 

原因は日本の購買力

 

一言でいうと、相対的に日本の購買力が落ちているということだ。日米間の肌感覚としては、米国で活動するためには日本の倍の費用がかかるという印象だ。それを承知で出費を覚悟できる企業は良いが、多くの企業は費用の高さに驚いて、海外での活動に二の足を踏む状況が増えているように思う。

 

よく似た言葉で「購買力平価」というのがあるが、これは為替レートの理論であって必ずしも現実を正確に反映するものではない。ここで言いたいのは、日本人が(日本企業が)海外でモノやサービスを買う力だ。具体的に言うと、

 

国内の物価が安いから、アメリカでの費用が高く感じる。

円が安いから外国で買い物をすると高く感じる。

アメリカの大学は授業料が高くて留学できない。

日本は給料が安いから、海外からの優秀な人材が集まらない。

 

購買力低下の原因は、為替政策であったり産業構造であったり派遣労働者の格差だったり構造的な問題が多い。また、企業はバブル崩壊以降一貫してベースアップをせずに内部留保に専念した。その結果、日本人の給料は横ばいで、日本全体の購買力も低下した。

 

復活のカギは個人のスキルアップ

 

個人でこの状況に対応する最も確実な手段は、海外に収入源をもつことだ。シンガポールに出稼ぎに行く。アメリカに家を買って賃貸収入を得る、といったことをすれば強い通貨で収入を得て弱い円で消費することができてお得だ。実際に、シンガポールで就職をしたという若者の話も聞いたことがある。ただ、これでは根本的な解決にはならない。

 

この問題の解決には、政府の政策転換も重要だ。岸田内閣が掲げる再分配の具体的な政策はまだ見えていない。再分配は成長とセットでなければ実現しない。その成長を促すためには企業の生産性の向上が必要だ。そして、生産性を高めるためには、雇用の流動性を高めることが必要だと考える。

 

日本企業の雇用形態の特徴は、終身雇用と年功序列だ。そのため雇用の流動性が著しく低い。さらに、リーマンショックのときに企業と組合は、雇用を守ることを優先してベースアップをしない選択をした。これが悪いとは言わないが、その後10年間も同じ枠組みを維持したことで雇用の流動化がさらに起きづらくなった。

 

終身雇用や年功序列を変えていこうという動きはあるが、なかなか進まない。”ジョブ型雇用”と”成果主義”もなかなか普及していない。しかし、近い将来そういった動きが加速される時が来る。

 

そうなったときに、個人が生き残るためには、労働者としての意識を変える必要があると思う。社員個人が会社への依存を減らして、独立志向になり、それぞれがプロフェッショナルな働きをするようになるべきだと考える。私はそれを「ソロプレナー」と呼んでいる。ソロプレナーになることが、個人の収入を増やす最大の武器になる。”ソロプレナー”については、以前の記事「あなたは兼業できますか?」やeブック「ソロプレナーという働き方~サラリーマンが副業で始める個人事業~」で紹介しているので、合わせて参照いただきたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

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