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2021年11月26日 (金)

アメリカで見つけた、おもしろ新技術(9); DNAは設計図

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第9回はバイオ技術の話。バイオインフォマティクスという言葉を聞いたことがあると思う。言葉の通り、生物学と情報工学を組みあわせた領域だ。当初は人などの塩基配列をデータベース化して活用するところから始まったが、いまでは新材料の開発にまで応用されている。

 

直近の話題としては、mRNAを用いたワクチン開発があった。

 

ワクチンは、人間の体が持っている「免疫応答」という作用を利用して抗体を作る”きっかけ”になるものだ。その”きっかけ”となるものとして、毒性をなくしたウイルス自体をワクチンとして使う。大量に作るためには、そのウイルスを培養して増やす工程が必要で、大量生産するのに何ケ月もかかる。もちろん、新たに作るワクチンは有効性や安全性を確認するために10年単位の時間がかかる。

 

mRNAワクチンは、ウイルスのスパイク部分のタンパク質の塩基配列を写し取った”設計図”で、それを基にしてスパイクタンパク質を合成することができる。その” 設計図”を人間の体の細胞内に取り込むと、細胞の持つ機能を使って細胞の中でスパイクタンパク質を作ることができる。ウイルス本体はどこにもなくて、スパイクだけが”生産”される。そのスパイクタンパクができると「免疫応答」が起こって抗体が作くられる。

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mRNAは、ウイルスのスパイクタンパクのゲノム解析をすることで”コード”の配列が分かれば、それを化学合成の手法で人工的に作り出すことができる。ウイルスを培養するよりもはるかに短時間で大量生産できる。

 

一方、DNA/RNA を解析して、新しい素材を作る研究が盛んにおこなわれている。

 

ボストンにあるGinkgo Bioworksという会社を数年前に訪問する機会があった。MITのTom Knight教授が2008年に設立した会社だ。Tom Nightは電子工学の教授で、1990年代に、「ソフトウエアはバイオロジーになる!有機合成はプログラムで設計する時代がくる。DNAがコーディングとして使われる。」と予測してバイオインフォマティクスの研究を始めた。

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この会社は、プロセスを自動化して膨大なDNAシーケンシングを続け、それをデータベースに蓄積している。ゲノム解析の結果と元のタンパク質が持つ性質(硬いとか、軽いとか、光学特性、匂い、反応など様々な特性)を関連付けている。それを逆に使うことで、目的とする性質を設定すれば、どのタンパク質が該当するかを見つけられる。そのゲノム情報から、そのタンパク質を構成するアミノ酸とその組み合わせ方を設計する。実際のアウトプット(製品)はエンザイム、つまり酵素だ。エンザイムはタンパク質を合成するための触媒として働く。目的のタンパク質を合成するためのエンザイムを設計して作り出すことで、その後の工程で目的の素材を生産することができる。

 

洗剤や匂いビーズ、塗料、フィルム、パッケージ材料などや、将来は合板などの建材、そして機体や車体といった構造材料まで可能性を秘めている技術だと思う。

 

 

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